相続土地国庫帰属制度

相続土地国庫帰属制度が令和5年(2023年)4月27日よりスタートします。

これは、『相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律』にて令和3年(2021年4月28日)に制定されたものが施行されることで開始されます。

今回は、こちらの制度について、書かせていただこうと思います。



相続土地国庫帰属制度の概要

相続土地国庫帰属制度が創設された背景

創設された背景としては、

① 土地利用ニーズの低下等により、土地を相続したものの、土地を手放したいと考える者が増加している。
② 相続を契機として、土地を望まず取得した所有者の負担感が増しており、管理の不全化を招いている。

ということです。また、相続した土地がこれまで登記が義務では無かったことによる原因もあるのかもしれません。(令和6年(2024年)4月から相続した土地は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務化されます。)

概要

〇相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により取得した土地を手放し、国庫に帰属させることができる制度

〇一定の要件を設定し、法務大臣が要件について審査(管理コストの国への転嫁や土地の管理をおろそかにするモラルハザード発生を考慮
 ①土地の要件:過分の費用又は労力を要する土地は不可
 ②負担金:審査手数料、土地管理相当額の負担金が必要

〇国庫に帰属した土地は、普通財産として、国が管理・処分
 (農地・森林:農林水産省、その他:財務省)

つまりは、
・相続人が相続、遺贈を受けた土地について、
・所持していても持っていても負担を感じる場合、
・国に所有権を移すことができる
というものですが、
*管理に通常以上の費用がかかったり、
*他者との紛争に関係しそうな土地であったり、
*売買で取得した土地
については適用外となるというものです。

国の財産を無駄に使用する趣旨ではないため、申請者に10年間土地管理相当費用として、負担金(最低20万円)を支払わせるというものでもあるため、しっかり検討して使用する必要のある制度ですね。(5年毎に確認等をするようなので、今後改正がある可能性はあるようです。)

土地問題に対する国民の意識調査(出典:法務省ホームページ)

申請から国庫帰属までの手続きの流れ

①事前相談
  ↓
承認申請(申請手数料を収入印紙で納付)
  ↓
②法務局による要件審査
 承認されると
  ↓
③申請者から10年分の土地管理費相当額の負担金を納付

 (承認通知から30日以内)
  ↓
④国庫帰属

 (所有権が国に移転)
 (登記は国が実施)

*相談、申請ともに本局のみの対応となるようです。(50局)
*当面は、オンライン申請には対応予定がないとのことです。

(出典:法務省相続土地国庫帰属制度のご案内)

承認申請できる人

いらない土地を国庫にという訳ではなく、相続等で取得した者が申請できます。

〇相続により土地の所有権又は共有持ち分を取得した者

〇遺贈(相続人に対する遺贈のみ)により土地の所有権又は共有持ち分を取得した者

*ただし、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した者と共同して行う場合に限るが、土地の共有持分の全部を相続等以外の原因により取得した共有者も申請ができる。

申請できるか否かの確認フロー

(参考:法務省相続土地国庫帰属制度のご案内)

土地の要件

却下要件

下記に該当する土地は、申請しても却下されてしまいます。

建物の存する土地
2担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
3通路その他の他人による使用が予定される土地墓地、境内地、現に通路・水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地 が含まれる土地
4土壌汚染対策法上の 特定有害物質により汚染されている土地
5境界が明らかでない土地その他の 所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

不承認要件

下記に該当する土地は、申請しても不承認となる可能性があります。(個別に確認が必要です。)

1崖 (勾配が 30 度以上であり、かつ、高さが5メートル以上のもの )がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
2土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の 有体物が地上に存する 土地
3除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない 有体物が地下に存する 土地
4隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地 隣接所有者等によって通行が現に妨害されている土地、所有権に基づく使用収益が現に妨害されている土地

5通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地
〇土砂崩落、地割れなどに起因する災害による被害の発生防止のため、土地の現状に変更を加える措置を講ずる必要がある土地(軽微なものを除く)
〇鳥獣や病害虫などにより、当該土地又は周辺の土地に存する人の生命若しくは身体、農産物又は樹木に被害が生じ、又は生ずるおそれがある土地(軽微なものを除く)
〇適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が追加的に必要な森林
〇国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
〇国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地

審査手数料について

〇申請の際に収入印紙にて支払します。(下記負担金とは違います。)
〇1筆あたり14,000円となります。(2023年4月現在)
〇手数料の納付後は、申請取り下げや審査の結果、却下・不承認となった場合、申請先連絡先へ連絡がつかなくなった場合でも、審査手数料は返還されません。

負担金について

〇負担金は、承認通知が到達した翌日から30日以内に納付が必要です。
〇納付先は、日本銀行
〇最低額(基準額)は、1筆20万円。土地の種目、面積、地域に応じて算定されます。
〇負担金納付時点で、土地の所有権は国に移転します。
〇所有権移転登記は、国が行います。
〇上記30日以内に負担金が未納付の場合、国庫帰属承認が失効となります。
 (失効した同一土地に国庫帰属を希望する場合は、最初から新規申請となります。)
〇負担金は、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した、10年分の土地管理費相当額です。(国の担当者による見回り等年間2万円相当が最低額として設定されています。)
〇負担金の計算については、 法務省のホームページ をご確認ください。(1,000円未満は切り捨てとなります。)
〇申請があった土地は、「宅地」「農地」「森林」「その他」の4種類に区分され、この区分に応じて納付が必要となる負担金が決定します。申請があった土地は、申請者から提出された書面の
審査、関係機関からの資料収集、実地調査などによって、客観的事実に基づいて、どの区分に当てはまるか判断されます。
〇負担金の計算に用いる地積は、登記記録上の地積が基準とされます。
〇納入告知書を添えて日本銀行(本店、代理店、歳入代理店)へ納付します。(法務局への支払いではありません。)

合算負担金の申し出

隣接する二筆以上の土地のいずれもが同一の土地区分である場合、申出をすることで、それらを一筆の土地とみなして負担金を算定することができます。
(個々に計算するよりも負担金が少なくすることができます。)

*土地区分が違う場合は、隣接していても一筆とみなされません。(監督官庁が違ってくるためのようです。)
・宅地+宅地や、農地+農地は可能ですが、
・宅地+農地のような場合は合算できません。
下記ご参照ください(  出典: 「相続土地国庫帰属制度のご案内」

〇合算負担金の申出は申出書を申請した法務局に提出します。
〇申出書は、申請から承認の間までに提出することができます。

法務局・地方法務局所在地一覧

法務省ホームページへ

管轄局名管轄区域所在地郵便番号電話番号
東京管内東京法務局東京都東京都千代田区九段南1-1-15 九段第2合同庁舎102-8225(03)5213-1234
横浜地方法務局神奈川県横浜市中区北仲通5-57横浜第2合同庁舎231-8411(045)641-7461
さいたま地方法務局埼玉県さいたま市中央区下落合5-12-1 さいたま第2法務総合庁舎338-8513(048)851-1000
千葉地方法務局千葉県千葉市中央区中央港1-11-3260-8518(043)302-1311
水戸地方法務局茨城県水戸市北見町1-1 水戸法務総合庁舎310-0061(029)227-9911
宇都宮地方法務局栃木県宇都宮市小幡2-1-11320-8515(028)623-6333
前橋地方法務局群馬県前橋市大手町2-3-1 前橋地方合同庁舎371-8535(027)221-4466
静岡地方法務局静岡県静岡市葵区追手町9-50 静岡地方合同庁舎420-8650(054)254-3555
甲府地方法務局山梨県甲府市丸の内1-1-18 甲府合同庁舎400-8520(055)252-7151
長野地方法務局長野県長野市大字長野旭町1108380-0846(026)235-6611
新潟地方法務局新潟県新潟市中央区西大畑町5191 新潟法務総合庁舎951-8504(025)222-1561
大阪管内大阪法務局大阪府大阪市中央区大手前三丁目1番41号大手前合同庁舎540-8544(06)6942-1481
京都地方法務局京都府京都市上京区荒神口通河原町東入上生洲町197602-8577(075)231-0131
神戸地方法務局兵庫県神戸市中央区波止場町1-1 神戸第2地方合同庁舎650-0042(078)392-1821
奈良地方法務局奈良県奈良市高畑町552630-8301(0742)23-5534
大津地方法務局滋賀県大津市京町3-1-1 大津びわ湖合同庁舎520-8516(077)522-4671
和歌山地方法務局和歌山県和歌山市二番丁3 (和歌山地方合同庁舎)640-8552(073)422-5131
名古屋管内名古屋法務局愛知県名古屋市中区三の丸2-2-1名古屋合同庁舎第1号館460-8513(052)952-8111
津地方法務局三重県津市丸之内26-8 津合同庁舎514-8503(059)228-4191
岐阜地方法務局岐阜県岐阜市金竜町5-13500-8729(058)245-3181
福井地方法務局福井県福井市春山1-1-54 福井春山合同庁舎910-8504(0776)22-5090
金沢地方法務局石川県金沢市新神田4-3-10 金沢新神田合同庁舎921-8505(076)292-7810
富山地方法務局富山県富山市牛島新町11-7 富山合同庁舎930-0856(076)441-0550
広島管内広島法務局広島県広島市中区上八丁堀6-30730-8536(082)228-5201
山口地方法務局山口県山口市中河原町6-16 山口地方合同庁舎2号館753-8577(083)922-2295
岡山地方法務局岡山県岡山市北区南方1-3-58700-8616(086)224-5656
鳥取地方法務局鳥取県鳥取市東町2-302 鳥取第2地方合同庁舎680-0011(0857)22-2191
松江地方法務局島根県松江市東朝日町192番地3690-0001(0852)32-4200
福岡管内福岡法務局福岡県福岡市中央区舞鶴3-5-25810-8513(092)721-4570
佐賀地方法務局佐賀県佐賀市城内2-10-20840-0041(0952)26-2148
長崎地方法務局長崎県長崎市万才町8-16850-8507(095)826-8127
大分地方法務局大分県大分市荷揚町7-5大分法務総合庁舎870-8513(097)532-3161
熊本地方法務局熊本県熊本市中央区大江3-1-53 熊本第2合同庁舎862-0971(096)364-2145
鹿児島地方法務局鹿児島県鹿児島市鴨池新町1-2890-8518(099)259-0680
宮崎地方法務局宮崎県宮崎市別府町1番1号 宮崎法務総合庁舎880-8513(0985)22-5124
那覇地方法務局沖縄県那覇市樋川1-15-15 那覇第1地方合同庁舎900-8544(098)854-7950
仙台管内仙台法務局宮城県仙台市青葉区春日町7-25仙台第3法務総合庁舎980-8601(022)225-5611
福島地方法務局福島県福島市霞町1-46 福島合同庁舎960-8021(024)534-1111
山形地方法務局山形県山形市緑町1-5-48 山形地方合同庁舎990-0041(023)625-1321
盛岡地方法務局岩手県盛岡市盛岡駅西通1-9-15 盛岡第2合同庁舎020-0045(019)624-1141
秋田地方法務局秋田県秋田市山王7-1-3010-0951(018)862-6531
青森地方法務局青森県青森市長島1-3-5 青森第二合同庁舎030-8511(017)776-6231
札幌管内札幌法務局最寄りの法務局等へ
要確認
札幌市北区北8条西2-1-1060-0808(011)709-2311
函館地方法務局函館市新川町25-18 函館地方合同庁舎040-8533(0138)23-7511
旭川地方法務局旭川市宮前1条3-3-15 旭川合同庁舎078-8502(0166)38-1111
釧路地方法務局釧路市幸町10-3085-8522(0154)31-5000
高松管内高松法務局香川県高松市丸の内1-1 高松法務合同庁舎760-8508(087)821-6191
徳島地方法務局徳島県徳島市徳島町城内6-6 徳島地方合同庁舎770-8512(088)622-4171
高知地方法務局高知県高知市栄田町2-2-10高知よさこい咲都合同庁舎780-8509(088)822-3331
松山地方法務局愛媛県松山市宮田町188-6 松山地方合同庁舎790-8505(089)932-0888